各種予防

予防医療の重要性について

ワンちゃんやネコちゃんに感染するウイルスや寄生虫の病気のなかには、一度感染してしまうと治療が難しかったり、飼い主様に感染したりする伝染病もあります。そのため、伝染する前に感染症の予防対策を行うことが非常に重要です。
動物やご家族の健康を守るためにも、各種伝染病を予防する混合ワクチンの接種や、ノミ・ダニ・フィラリアなどの寄生虫予防薬の投与は必ず行いましょう。

混合ワクチン

感染すると命に関わることもあるウイルスや細菌に対し、十分な抵抗力をつけるものが 混合ワクチンです。

  • ワンちゃんの混合ワクチン

    年齢別の接種回数

    子犬への接種
    生後間もない子犬は初乳を通して母親から免疫を譲り受けます(移行抗体)。この免疫を持っている間は、病気にかかりにくいという利点がありますが、同時にワクチン接種をしても効果を得にくい時期でもあります。
    子犬のワクチン接種は、この母親譲りの免疫がなくなる時期を待って行わなければなりませんが、時期は子犬によって個体差がありますので、2〜3回、又はそれ以上のワクチン接種をする必要があります。
    病気を防ぐ為のより確実な接種時期は獣医師にご相談ください。一般的には、大人になるまでに2~3回、大人になってからは年1回のワクチン接種が必要です。
    当院では子犬の場合、生後7~8週齢に1回目のワクチンを接種した後、3~4週間毎に2~3回の接種を行います。
    成犬への接種
    年に1回のワクチン接種が必要です
  • 当院で取り扱っているワクチン

    6種混合ワクチンと8種混合ワクチンを用意しています。

    6種
    アデノウイルスⅡ型・ジステンパー・伝染性肝炎・パラインフルエンザ・パルボウイルス・コロナウイルス
    8種
    アデノウイルスⅡ型・コロナウイルス・ジステンパー・伝染性肝炎・パラインフルエンザ・パルボウイルス・レプトスピラ(カニコーラ・イクテロヘモラジー)
    ライフスタイルの変化などによりワクチンも適正なものに変更する必要がありますのでご相談ください。
  • 猫の混合ワクチン

    年齢別の接種回数

    子猫への接種
    生後6-8週齢で1回目のワクチン接種を行い、16週齢までに1~2回の接種を行います。
    成猫への接種
    年に1回のワクチン接種が必要です。
  • 当院で取り扱っているワクチン

    当院では3種と5種ワクチンを用意しております

    3種
    猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス、猫汎白血球減少症
    5種
    猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス3種・猫汎白血球減少症
    猫白血病ウイルス・猫クラミジア感染症
  • ワクチン抗体価の確認ついて

    ワクチンの効果持続期間については個体差があり、ワクチンの効果が残っているか採血して調べる検査が抗体検査です。当院では高齢や病気でワクチンの副反応が不安視されるワンちゃんやねこちゃんのために、抗体検査を行えます。結果からワクチンの効果が切れていないと判断できる場合はワクチン接種を延期することが出来ます。
    ただし、ペットにおける抗体検査はまだまだ一般的ではないため、お住いのマンションなどでワクチン接種証明書が必要な飼い主様は1年に1回接種したほうが無難です。

  • フェレットの混合ワクチン

    フェレットはジステンパーウイルスに感染し、重症化する可能性が高いため、ワクチン接種をおすすめしています。フェレット専用のワクチンは、日本に存在せず、しかも単独のジステンパーウイルスワクチンもありません。よって、ジステンパーウイルスが含まれているワンちゃん用の2種混合ワクチンを使用します。
    生後60日前後、生後90日前後に2回接種しますが、ペットショップでの購入時点ですでに1回目が済んでおり、2回目の接種のみ病院に連れてきていただくことが多いです。その後は1年ごとに1回の追加接種が必要です。

狂犬病ワクチンについて

  • 狂犬病は犬だけでなく、人を含む全ての哺乳類に感染する人獣共通感染症です。発症すると死亡率はほぼ100%で治療法もない恐ろしい病気です。
    1957年以降、日本で発生したという報告はありませんが、近隣諸国では狂犬病が蔓延しており、いつ国内に侵入してくるか分かりません。
    日本では法律で、生後91日齢以上の犬は年に1度の狂犬病予防注射が義務付けられておりますので、必ずワクチン接種を行いましょう。
  • 注意事項

    • 当院では江南市にお住いの方はもちろん、一宮市、大口町、扶桑町にお住いの方も飼い犬登録や注射済票の発行がその場でできます。
    • その他の地域にお住まいの方は狂犬病ワクチンを接種し、接種証明書をお渡ししますのでその証明書を持参し、お住いの地域の役所に行ってもらう必要があります。詳しくはお尋ねください。
    • 初年度の混合ワクチン接種が済んだ後に、狂犬病ワクチン接種をします。接種のタイミングに関してはご相談ください。
    • 2年目以降はお住いの市町村から送られてくるハガキを必ず持参してご来院ください(年1回)。

ノミ・マダニ予防

  • 気温が上がってくると、ノミやマダニといった寄生虫の活動が活発になってきます。ノミやマダニは草ムラなどに潜んでいて、ワンちゃんやネコちゃんに感染します。うちの子は外へ出さないからといって、安心はできません。まれに、人間が外から持ち帰ってしまう事もあるのです。
    ノミは血を吸われると非常に強い痒みが生じ、皮膚炎の原因となりますがそれ以外にも下記の伝染病を媒介します。また、人間も襲います。
    マダニも吸血しますが、痒くはなりません。しかしながら、SFTSやバベシア感染症(下記参照)などノミよりも怖い伝染病を媒介しますので、予防が必要です。

    ※春~秋にかけて感染リスクが高いため、積極的に外に出る動物は必ず予防が必要です。ノミは気温が13℃以上で繁殖可能なため、寒い冬の時期でも暖かい室内では増殖します。また、マダニも秋から冬にかけて感染する可能性がありますので、本来は1年を通して月1回の予防が望ましいですが、費用がある程度かかりますので、いつまで予防するか詳しくはご相談ください。
    予防薬にはスポットタイプ(背中にたらすタイプ)とおやつタイプの飲み薬があります。

  • ノミがもたらす被害

    • ノミアレルギー性皮膚炎

      大変かゆみの強い皮膚病です。ノミの唾液成分に対するアレルギー反応で、激しいかゆみや湿疹、脱毛 などを伴う皮膚炎を示す様になります。一度アレルギーを起こした子は、その後僅かなノミ寄生にも反応してしまう様になります。

    • 瓜実条虫(サナダムシ)

      ノミの幼虫が条虫の卵を食べ、その体内で発育します。成虫になったノミをグルーミングなどで飲み込んでしまい、小腸に寄生、増殖します。この虫は最大50cm程まで成長し、白い米粒の様な片節が便や肛門周囲に付着します。時に嘔吐、下痢を起こします。

    • 猫ひっかき病

      バルトネラ・ヘンセレという菌によって起こる感染症で、ノミを介して猫から猫へ移ります。猫には症状が出ませんが、感染した猫に人が噛まれたりひっかかれたりすると、リンパ節が腫れたり、発熱や頭痛を起こす事があります。

    • ヘモプラズマ感染症

      ネコちゃんの赤血球表面にヘモプラズマという寄生虫が寄生し、貧血、発熱、黄疸、元気消失などの症状を引き起こします。正確な感染経路は解っていませんが、ダニやノミが媒介している可能性があります。

    • 貧血

      子犬や子猫の場合、大量寄生によって貧血が起こる事があります。

  • マダニがもたらす被害

    • バベシア症

      バベシアという原虫が犬の赤血球に寄生し破壊する事で起こります。貧血、発熱、食欲不振、黄疸などがみられ、死に至る事もある恐ろしい病気です。一度感染すると、完全に体からバベシア原虫を追い出す事はできません。

    • ライム病

      ライム病はスピロヘータの一種であるボレリアの感染に起因する細菌感染症で、マダニからペットや人にも感染します。主に神経症状、発熱、食欲不振などの症状を引き起こします。

    • SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

      SFTSは、SFTSウイルスを持つマダニの咬傷により、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状が起き、重症化すると死亡することもある怖い感染症です(死亡率約30%)。ワンちゃんやネコちゃんも感染し、ヒトと同様の症状を示します。死亡する可能性もあり、なかでもネコちゃんの死亡率は高く(約60%)、注意が必要です。感染すると特効薬はないため、ウイルスを媒介するマダニの予防が大切です。

フィラリア症予防

  • フィラリア症は蚊に刺されると感染する寄生虫の病気です。目に見えない幼虫が体内に侵入し、数か月かけて大きく成長した後、心臓やその近くの血管に寄生し、心臓病などを引き起こします。感染が悪化すると咳、呼吸困難、体重減少、腹水、赤色尿等の症状が見られ、症状が目立つ頃には死亡する危険がある恐ろしい病気です。予防が普及していない時代はワンちゃんの死亡原因ワースト1位でした。

    フィラリア症は予防すれば100%防げる病気ですが、予防を怠ると「知らない間に感染していた」ということがあります。

    感染すると治療が大変で、長期間薬を飲んだり、ワンちゃんにリスクのある駆虫薬の投薬や手術を行わなければなりません。ネコちゃんはそもそも疑わしい症状があっても、検査で診断することが困難です。よって、毎年の予防がとても大切です。
    感染には幼虫が成長するための気温が重要で、中部地方の予防期間は5月下旬~12月初旬が一般的です。最後1回は寒い時期ですが、体に残っているかもしれない幼虫を成長させないよう全て退治するために大切なので、忘れないようにしましょう。

  • 予防薬の種類

    • 飲み薬タイプ(月1回)

      チュアブル(食べておいしいおやつタイプ)、錠剤(お薬タイプ)があります。
      予防薬にはノミ、ダニ、内部寄生虫を同時に駆除できるものもある為、どういうタイプの飲み薬が良いか気軽にスタッフにお尋ね下さい。

    • スポットタイプ(月1回)

      背中にたらすタイプの滴下型の予防薬で、同時にノミも予防できます。
      お薬を飲ませにくい猫のフィラリア予防にも効果的です。

    • 注射タイプ(年1回)

      年に1回注射するだけで1年間予防効果が継続します。投薬ミスや投薬忘れを防ぐことができ、確実に予防できます。そのため、毎年注射を行っているワンちゃんについては予防注射前の血液検査も必要ありません。(※飲み薬からの変更や予防できていない期間があったワンちゃんは血液検査が必要になります。)
      当院では注射で予防しているワンちゃんが一番多いです。ただし、ノミダニ予防は飲み薬などで別に行っていただく必要があります。

  • フィラリア予防薬を安全にご使用いただくために

    万が一、薬の飲み忘れや投薬の失敗などにより、予防がうまくいっていない場合、フィラリアに感染しているかもしれません。もし、感染しているのに予防薬を飲むと、体内で大量の幼虫が死ぬことで急性のアレルギーになったり、大静脈症候群になる可能性があり、最悪死亡する危険があります。
    よって、当院では飲み薬で予防を行っている場合や、予防できていない期間が少しでもあった場合、予防シーズン前のフィラリア検査(血液検査)をお勧めしており、感染していないことを確認してから予防薬を処方するようにしています。