避妊・去勢
病気を予防する避妊・去勢
動物病院で一般的に言われている去勢手術とは男の子の精巣をとること、避妊手術とは女の子の卵巣もしくは卵巣と子宮の両方をとることです。
自然のままが一番、健康な子に手術をするのはかわいそう、麻酔が怖いなどの意見があると思います。一方で、手術をすることで発情のストレスを取り除き、性ホルモンの関係する病気を予防するという大きなメリットもあります。
避妊・去勢手術をする、しないはどちらを選んでも間違いではなく、飼い主様によって正しい答えは異なると思います。大切なのは可愛いご家族のためによく考え、選択することだと思います。当院では手術についてのメリット、デメリットをしっかりご説明していますので、手術するべきかどうか一緒に考えましょう。
避妊・去勢手術を行う
2つのメリット
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1発情期のホルモンバランスの乱れからくるストレスの軽減
特に女の子は、発情期にホルモンバランスが大きく乱れ、体調を崩しやすいです。男の子は性的興奮により、女の子のもとに行けないストレスから攻撃的になったり、女の子を探しに家出をしたりする場合があります。これらはかなりのストレスで、身体的な負担になっていると言われています。
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2歳をとった時にかかる病気の予防
男の子が去勢手術をすることによって予防できる病気
- 肛門周囲腺腫
- 肛門の周りにできる腫瘍です。肛門の周りを取り巻くように腫瘍が発生し、腫瘍が破裂して化膿し、膿や出血が止まらなくなったり、腫瘍が肛門を圧迫しうんちが出なくなってしまう子もいます。 そうなると肛門全体をとる手術が必要になることもあります。
- 前立腺肥大
- 精巣からでる性ホルモンの影響で前立腺が大きくなります。前立腺が膀胱の出口についており、それが尿道を圧迫することから、尿が出にくくなります。また、前立腺の近くにあるうんちの通り道(結腸・直腸)も圧迫されるので、便もでにくくなります。さらに、前立腺肥大が重度になると、細菌感染がおこりやすくなるケースもあります。
- 精巣の腫瘍
- 高齢になると精巣が腫瘍になる場合があります。腫瘍になると他の臓器に転移してしまったり、腫瘍から出るホルモンの影響で重度の貧血になり、死亡する可能性があります。
また、精巣が正常の位置ではなく(陰嚢に入っていない)、お腹の中や皮膚の内側に張り付いている場合、将来的に精巣が腫瘍になる可能性が約10倍高まると言われているので、早めの去勢手術をお勧めします。 - 会陰ヘルニア
- 肛門に近い腸の周りの筋肉が薄く弱くなり穴が開き、腸などお腹の中の内容物が皮膚のすぐ内側に脱出してしまう病気です。脱出した臓器により症状は異なりますが、うんちが出にくくなることが一番多いです。膀胱が脱出し、尿が出なくなると非常に危険です。この病気になる仕組みは完全にはわかっていませんが、去勢手術をしていないワンちゃんが多いことから、精巣から出る性ホルモンが原因の一つであると考えられています。
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女の子が避妊手術をすることによって予防できる病気
- 乳腺腫瘍
- 乳腺腫瘍はいわゆる「おっぱいのしこり」です。発生した乳腺腫瘍のうち、ワンちゃんでは約50%が、ネコちゃんは90%以上が悪性の乳癌であることが知られています。良性の場合、手術で切除すれば問題ありませんが、悪性の乳癌は再発したり、他の臓器に転移し、最終的には死んでしまいます。
ワンちゃんもネコちゃんも乳腺腫瘍の発生には卵巣から出る性ホルモンが大きく関係しており、性ホルモンの影響をうける前の若いうちに避妊手術をすることで、乳腺腫瘍ができる確率を大幅に下げることができます。 - 子宮蓄膿症
- 子宮蓄膿症は子宮の中で菌が増え、膿がたまる病気です。中~高齢のワンちゃんで多く、発情数か月後に発症します。よく水を飲むようになり、外陰部からオリモノが出てくる場合と出てこない場合があります。この病気が悪化すると元気や食欲がなくなり、全身にばい菌の毒が広がり、腎不全を起こして亡くなってしまうことがあります。手術で子宮卵巣を摘出すると治りますが、手術後に腎不全になる場合もあります。 この病気は、避妊手術を行うと 100%防ぐことができます。
- 卵巣腫瘍
子宮腫瘍など - 卵巣や子宮の腫瘍も良性と悪性があります。これらの腫瘍は早期に避妊手術を行うことで防ぐことができます。
避妊・去勢手術のデメリット
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避妊去勢手術にはいくつかデメリットがあります。
まず第一に太りやすくなることです。肥満になると関節炎や靭帯損傷、糖尿病などのリスクが上がります。手術後は約30%基礎代謝が低下すると言われており、気を付けて体重管理をしないといつの間にか肥満になってしまいます。ワンちゃんやネコちゃんは一度太ってしまうとダイエットすることが大変なので、太らないよう月に1度は体重をチェックする必要があります。
また、去勢手術、避妊手術後用のローカロリーフードも発売されており、それらを利用することも有効です。次に女の子のワンちゃんでは避妊手術後に尿漏れが起こる可能性があります。これは卵巣を摘出することにより、女性ホルモンが不足し、膀胱の締まりが弱まることが原因とされています。ほとんどの発生は大型犬であり、発生する確率は約5%と少ないですが、もし、この病気になってしまった場合はホルモン剤を飲み続けなければいけない場合があります。
また、去勢も避妊手術も全身麻酔が必要であり、100%安全ではありません。極めてまれですが、健康な動物に麻酔をかける場合も麻酔によるトラブルが起きることはあります。
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当院では麻酔で絶対に事故を起こさないよう、万全の態勢で手術を行います
当院ではできるだけ安全に手術を行うために、術前検査を推奨しています。術前検査とは生れつき心臓や腎臓、肝臓などに異常がないか、全身麻酔をかけても大丈夫かを調べる検査です。異常が見つかるケースは稀ですが、より安全に手術を行うためにご協力をお願いしています。手術中は生体情報モニターを装着し、異常がないか常に確認しています。術後は状態に異常がないことを確認し、退院としています。麻酔からの回復が十分でない場合は一泊入院し、体調回復後に退院としています。飼い主様が安心して去勢避妊手術を受けていただけるように、事前の説明をしっかりすることに重点を置いています。気になることは何でもご相談ください。
手術の流れ
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Step01
ご予約
避妊・去勢手術は完全予約制です。事前に受付でのご予約、またはお電話(0587-55-9177)にてお問い合わせください。
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Step02
術前検査
手術のために全身麻酔をかけても問題ないかどうかを判断するために⾝体検査、⾎液検査、胸部X線検査を行います。安全に手術を行うためにできるだけ実施をお願いしています。
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Step03
手術当日
前日の夜ご飯は22時までに済ませましょう。当日の朝は絶食ですが、お水は飲ませてもらっても大丈夫です。9時から12時までにご来院をお願いします。
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Step04
手術
⽑刈り、⿇酔の時間も含めると避妊⼿術は約1時間、去勢⼿術は約30分です。ただし、ワンちゃんやネコちゃんの状態によってはもう少し長引くこともあります。
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Step05
お迎え
基本的に当日の午後の診察時間にお迎えをお願いしています。ただし、一泊お預かり希望の場合は翌日のお迎えになります。手術当日は元気がないことが多いので、ご自宅で様子を見ることがご心配の飼い主様は一泊入院も可能です。
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Step06
抜糸
手術から1週間~10日後を目安に抜糸を行います。猫ちゃんの去勢手術に関しては抜糸の処置がありません。