脳神経疾患

脳神経疾患について

脳神経疾患は、脳、脊髄、末梢神経などにトラブルが起こることで発症します。様々な症状がありますが、「肢を引きずる」「どこか痛そう」「けいれんを起こす」などが代表的です。
最終的な診断には高度医療機器(MRIや筋電図・誘発電位検査装置)などを用いた精密検査が必要ですが、全身麻酔をかけなければならないことや、大学病院など二次診療施設に検査を受けに行っていただく必要があることから、動物医療ではまだまだハードルが高いことが現実です。
当院の獣医師は二次診療施設で多くの神経疾患を診断、治療してきた豊富な経験を活かし、問診、神経学的検査、血液検査、レントゲン検査などを組み合わせ、その時点で可能性が高い順に予想される病気を飼い主様にご説明します。

そのうえで精密検査を希望される場合は二次診療施設をご紹介します。検査よりも治療の優先を希望される場合は、想定される病気に対し、その時点で可能な治療を試験的に行い、注意深く経過観察を行います。また、セカンドオピニオンにも対応していますので、「今通っている動物病院で行っている治療がベストなのか知りたい」「検査結果や診断が間違っていないかもっと詳しく説明してほしい」などのお悩みがございましたら、ぜひ気軽にご相談ください。

主な脳神経疾患について

    • 椎間板ヘルニア

      脊椎は多数の椎骨という骨がつながってできていて、椎骨と椎骨の間には椎間板というクッションのようなものが存在します。この椎間板がとびだして脊髄(神経)を圧迫する病気を椎間板ヘルニアといいます。ヘルニアが生じた部位により頚部椎間板ヘルニアと胸腰部椎間板ヘルニアに分けられます。軽症では首や腰の痛みのみで、飲み薬で良くなる場合も多いですが、重症例では肢の麻痺が認められ、命の危険が伴う場合もあります。様子を見ずに早めに病院を受診し、精密検査や外科手術が必要かどうか、獣医師と相談しましょう。

    • 脊髄空洞症

      脳から腰までの長く太い脊髄という神経の内部に液体が溜まる空洞ができてしまう病気です。キャバリアや小型犬に多く、頭の後頭部の骨(後頭骨)と首の骨(頚椎)との接合部分に先天性の奇形があり、脳脊髄液の流れが滞ることが原因と考えられています。
      「後頭部や首を痒がる」、「抱っこしたり、頭をなでるときに痛がる時がある」、「足をひきずる」などの症状がみられます。飲み薬による治療と手術による治療があります。

    • てんかん

      てんかんは脳細胞が異常に興奮することで生じる発作を繰り返す病気です。症状は様々で、「突然意識を失い、全身がけいれんする」といったよくあるパターンから、「空中に向かって咬みつく行動を繰り返す」とか「片足ずつひきつけを起こす」など、飼い主様が気づきにくい症状も少なくありません。紛らしい症状もありますので、てんかんは発作前や発作時の様子を撮影していただくと診断に役立ちます。全身がけいれんするタイプの発作は症状が激しく、悪化すると命の危険がある場合もありますので、発作がおさまったらすぐに動物病院を受診しましょう。発作が起きている間は苦しそうですが、頭をなでようとしたりすると咬まれることもありますので、頭をぶつけたりしない安全な場所に寝かせて、不安かもしれませんが落ち着いて静観するようにしましょう。2~3分経っても発作が止まらない場合はすぐに病院に連絡してください。

    • 脳血管障害

      動物医療が進歩し、ワンちゃんやネコちゃんにもヒトと同様、脳血管障害が起こることがわかってきました。脳血管障害には脳梗塞(脳の血管がつまり虚血する)や脳出血があります。
      「突然けいれん発作が起きた。」「突然頭が傾いて倒れた、目が揺れている」など様々な症状がありますが、どれも「突然起こる」ことが特徴です。中~高齢での発症が多く、発症から24~72時間で症状の悪化が止まります。その後は緩やかに改善することが多いですが、再発を予防するため、血管に異常をきたす基礎疾患がないか調べることが重要です。

    • 中内耳炎

      耳を覗いてみると、奥に鼓膜という膜があり、鼓膜の奥には骨に囲まれた鼓室があり、中耳といいます。中耳のさらに奥には内耳があり、これらの部位に炎症が起きることを中内耳炎といいます。外耳炎が悪化し、鼓膜が破れて中に菌が入ったり、のどの奥と鼓室をつないでいる、細い耳管という管から菌が入り、感染して炎症を起こすことがほとんどです。前庭という目や頭の位置を調節し、体のバランスを正常に保つ神経がトラブルを起こすため、頭が傾く、目が揺れる、フラフラするといった症状が認められます。耳の病気以外でも、特発性前庭障害、甲状腺機能低下症、腫瘍、脳血管障害といった病気で類似の症状が認められます。原因により治療法が異なるため、正確な診断が重要です。

    • 脳腫瘍

      脳腫瘍は頭蓋骨の内側(頭の中)に発生する「しこり」であり、どんどん大きくなることで脳を圧迫し、様々な神経症状を引き起こします。ワンちゃんもネコちゃんも脳腫瘍の発生頻度は10万頭に数十頭であり、比較的稀な病気ですが、フレンチブルドッグなどの犬種は若くても発生することがあるため、注意が必要です。脳腫瘍の診断にはMRI検査が必要不可欠です。治療は手術、放射線治療、抗がん剤などがありますが、早期発見が重要であり、「けいれん発作が起きる」、「クルクル同じ方向に回る」、「頭を壁に押しつける」などの症状がありましたら、当院にご相談ください。

  • 大学病院など
    高度医療施設と連携しています

    当院は大学病院などの二次診療施設と連携しています。ワンちゃんや猫ちゃんの診察をした結果、難症例だったり、精密検査(CT、MRI、脳波検査など)が必要だったりする場合は、積極的に専門医へ紹介状をお書きします。飼い主様が次にどのようなことをすればよいのか積極的にサポートいたしますので、まずは少しでも気になる点がございましたら、ぜひご相談ください。